pinフォトダイオード/raspberry PIで簡易パワーメータを作る

ちょっとした光学系の実験をしていると、パワーモニタが必要になるときがあります。絶対値をちゃんと知りたければ校正した計測器が必要ですが、系のドリフトや調整の具合を知るためだけなら相対値だけでよいですね。

今回制作しようと思ったのは、光学系の要所要所に挟み込む、安上がりだけど安定し、感度の十分にあるpinフォトダイオードを使った弱光用パワーメータです。

仕様の検討

レンジ

測定対象のおおよその明るさを調べてみました。秋月電子から買ったTSL2561を使ったフォトセンサがあったので、これをarduinoに組んで調べてみました。すると、0.5[lux](ルクス、照度の単位)でした。

測定系の明るさはさらに1桁くらい大きくなりそうだったので、フルスケールを5[lux]と仕様を定めました。

ちなみに、luxという単位の目安はこんな感じです。

  • 0.001lux  星明り
  • 0.01lux  三日月の月明かり
  • 0.3lux 満月の夜
  • 1lux 1m離れたロウソクの光

分解能

12bitあると、およそ0.001[lux]の分解能になります。16bitなら7.6e-5[lux]なのでさらに二けた望めますが、今回は必要ないでしょう。

5/2^12=0.0012[lux]

12bitのデジタル変換は容易いですが、16bitになると少し気を使わなければならなくなります。

今回作るパワーメータは、暗室で目視できるかできないか程度の弱光を線形に捕えれば満足としました。

私が今回扱ってる光学系は0.5luxですが、設計変更で1/4の明るさになる可能性があります。その場合、0.125luxです。そこからさらに二けたの分解能で測定できることになるので、この仕様でOKです。

応答速度

応答速度は1msec以内としました、1kHzです。pinフォトを使う割にはゆっくりめですね。どうせ人力微調整に使うだけですし、外乱チェックもおおよそ50/60Hzの商用電力由来の雑音と、機械振動由来の振動くらいしか気にしないでよさそうです。

pinフォトは本来的にはとても応答が早い(速いものでは1GHz近いものもある)ので、ナノ秒程度のパルスモニタにも使うことができます。でも、今回は必要ないのでそんなものは使いません。

読み出し用のマイコン

オシロスコープでモニタするのが、一番楽ちんです。

ネットワーク越しに実験系をモニタできるようにしたいので、ちょっと大げさですが手元に転がっていたraspberry PIを選択しました。

応答速度が要らないので、特に何でもよいのです。Arduinoでもよいし、PICでもよいです。

パーツの選定

フォトダイオードの選択

フォトダイオードは、S6775を選択しました。秋月電子で300円で売られている浜松ホトニクス製の大面積のピンフォトです。

  • 受光面サイズ:5.5x4.8mm=有効受光面積:26.4mm
  • 逆電圧V:絶対最大35V
  • 感度波長範囲λ:320~1100nm
  • 最大感度波長λp:960nm
  • 受光感度S:
  • 0.7A/W(λp
  • 0.45A/W(660nm)
  • 0.55A/W(780nm)
  • 0.6A/W(830nm)
  • 短絡電流ISC:30μA(@100lx)
  • 暗電流I:最大0.5nAtyp(V=10V)

φ50もあるコリメート光を測りたいので、大面積のほうが有利です。細いビームを測りたければ、小さめの素子を選んだほうが効率がよいでしょう。

現物の写真がこちらです。たしかに、受光面が大きい。

どれくらいの電流が取り出せるのか?

フォトダイオードは、光のエネルギーに応じた電流を取り出せる素子です。

実際にどれくらいの電流が取り出せて、どのように増幅したら信号として取得できるか見積もる必要があります。

というわけで、感度を計算します。luxは変な単位で、人間の視感度特性によってエネルギーへの換算係数が違います。

定義では、波長555nmで

1[lux]=1.46[mW/m]=0.00146[W/m]

実は、私が使うHeNeレーザーの赤色は、ピークの555nmの0.2倍しか人間が感じないのです。だから、エネルギー換算すると以下のようになります。

1[lux]=0.00146/0.20663[W/m2]=0.0071[W/m]

ちなみに、波長比視感度の関係は以下のようになっています。

530nm 0.83780
535nm 0.89900
555nm 1.00000
630nm 0.25238
635nm 0.20663
650nm 0.10289
670nm 0.03439
700nm 0.00513

受光面積が26.4mmなので、受光面に入射するエネルギーは、

0.0071*26.4e-6=1.87e-7 [W/lux]

測定対象は632.8nmのHeNeレーザなので、感度は0.45[A/W]程度ということになります。

1.87e-7 [W/lux]/0.45[A/W]=4.17e-7  [A/lux]

つまり、5[lux]の光が入射したときの出力は、

4.17e-7 *5=2.1[μA]

 

要求する12bitの分解能の最小値では、0.5[nA]の電流を検知すればよいことになります。

やっぱり16bit要求したらとても難しい話になりそうですね。分解能よりノイズの方が大きいなら、それ以上分解しても意味がありません。ノイズの素性がよい(ドリフトがない)なら、時間方向に積分することを考えればよいでしょう。

増幅器をまじめに考えるなら……

フォトダイオードの信号読み出しに必要なのは、電流を電圧に変換する「トランス・インピーダンス・アンプ」(T-Zアンプ)です。

ちゃんとした設計法は、半導体メーカー各社によいアプリケーションノートが公開されていますので、それらを読んでみましょう。

10kHzを超える程度の応答特性が気になるなら、ちゃんと位相補償しないとオーバーシュートがでてしまうかもしれません。マトモに取り組むなら、回路シミュレータにかけてRとCを決める必要があります。

増幅器を雑にやっつけるなら……

とりあえず、安いアンプを使って安く光センサを組むだけなら、小学生でもできそうです。

おおよそ速い信号は入らないですし、ステップ応答的なものを測定する必要もないので、とりあえず素直に抵抗だけでアンプを組んでみることにしました。問題が起きたら改良します。

回路図がこちら、ユニバーサル基板に実装するための図なので、少し変な図ですが、これで実装しました。

AD822デュアルOPアンプを用い、前段をT-Zアンプ、後段をボルテージフォロアとしています。

 

無理やり実装したのがこちらです。とりあえず、オシロで信号を確認し、手持ちのルクスメータと比べたところ、ゲインで30%程度違いでした。

 

位相補償を考える

このままでも十分に機能しますが、ステップ応答特性を改善するためにはフィードバック抵抗には位相補償のためのキャパシタを並列で加えるべきです。

これがないと、入力に速い変動が入った際にオーバシュートが生じ、その後の収束に時間がかかります。現象としては、ノイズが多く見えるようになります。

そのため、周波数特性を改善し、高周波成分に対してゲインをなだらかに落とす必要があります。

~続く。

 

 

 

 

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